スギ花粉症の舌下免疫療法について

スギ花粉のオフシーズンである6月から11月は、舌下免疫療法のスタートに適している期間とされています。
当院では15歳から60代前半で自己管理可能な方に限り、舌下免疫療法を行っています。事前に電話連絡をお願いします
(喘息等のアレルギー症状の強い方はお断りすることもあります)

以下に当院でお渡しているプリントの一部をまとめましたので、ご参考にしてください。

舌下免疫療法の開始にあたっての確認事項

  1. 薬物療法や手術療法とは異なり、すぐに効果があらわれる治療法ではありません(妊娠中、授乳中の投与に関する安全性は確立していません)
  2. 花粉症の場合には花粉非飛散期も含め、長期間(3~5年)の治療を受ける必要があります
  3. 舌下アレルゲンエキスの服用をスケジュール通りに毎日継続しなくてはなりません
  4. 開始前にアレルギー検査を必要とし、開始後に少なくとも1か月に1度の受診が必要となります
  5. 舌下免疫療法は長期寛解や治癒が期待できる一方、すべての方に効果が期待できるわけではありません
  6. 効果があって終了した場合も、その後効果が減弱する可能性があります
  7. アナフィラキシーなど重篤な副反応の頻度は少ないですが、口の中の腫れ、舌下の腫脹や口内炎など、軽度の副反応は頻度が高い治療法です。副作用の対処法を正しく理解していただく必要があります

*アナフィラキシーは最も怖い副作用で、緊急で病院での診療が必要です。入院治療を要することがあります。

舌下免疫療法の禁忌(不適応)あるいは慎重投与

  1. 高血圧、狭心症、不整脈などに使用されるβ阻害薬使用例はアナフィラキシーが起こりやすいとの報告があり、またアナフィラキシーが起きた時に使用するアドレナリンの効果を減弱することから適応となりません
  2. うつ病やパーキンソン病に用いられる薬を使用中には、アナフィラキシーが起きた時に使用するアドレナリンの効果が増強することから適応となりません
  3. 妊娠に対しては安全性が確立していないため、治療開始時に妊娠している例では投与を避ける必要があります。3~5年の治療を要するため、数年以内に妊娠を希望する例では開始を見合わせる必要があります
  4. 重症喘息合併例(1秒率が70%未満)
  5. 全身性の重篤な疾患をもつ例
  6. 悪性腫瘍・自己免疫疾患・免疫不全症・重症心疾患・慢性感染症
  7. 全身性ステロイド薬や抗癌剤を使用する例は適応となりません
  8. 急性感染症に罹患している方(発熱を伴う方)

治療上の注意点

  1. 初回投与時および増量時(通常開始1週後)には、自宅で投与するのではなく医師の管理下に院内で舌下投与をしてもらいます。副反応の多くは投与後30分以内に発生するとされているので、その間院内で待っていただきます
  2. 体調不良、倦怠感、寝不足がある時に全身性の副作用が発生しやすいとされています
  3. 局所反応は、口腔、舌、口唇の腫脹やかゆみ、のどのかゆみ、悪心、嘔吐、腹痛、下痢、胸やけ、口蓋垂の浮腫などです。発生時には抗ヒスタミン剤やステロイド剤などの内服が必要となることがあります
  4. 局所反応があった場合には、その後の投与量や投与間隔を変更する場合があります。症状が強い場合には抗ヒスタミン薬を併用していただく場合があります
  5. 全身性副反応の前駆症状として局所反応が必ずしも起こるわけではありません。アナフィラキシーショックは舌下投与数分以内に起きているとされています
    アナフィラキシーの初期症状 (重症化のおそれがあるサインとして注意を要します)
    もやもやとした不安感  冷汗  しびれ感  眩暈・耳鳴り
    口渇・口内異常感  口腔内や口唇の発赤・痒み・膨疹
    目のかゆみ・流涙・鼻水・くしゃみ・咳

    アナフィラキシーの診断基準

    1. 皮膚・粘膜症状(全身の発疹、掻痒、紅潮、浮腫)
    2. 呼吸器症状(呼吸困難、気道狭窄、喘鳴、低酸素血症)
    3. 循環器症状(血圧低下、意識障害)
    4. 持続する消化器症状(腹部疝痛、嘔吐)

    2つ以上の症状出現でアナフィラキシーと診断します

    *アレルゲン暴露後の急速な(数分から数時間以内)血圧低下があった場合には、1つでもアナフィラキシーと診断します

シダキュア服用後30分、投与開始初期、スギ花粉飛散時期にはアナフィラキシー発現に特に注意が必要です
アナフィラキシー発現時の対処を考慮し、家族のいる場所や日中の内服が望ましいとされています