反復性中耳炎⑤

反復性中耳炎①    の続きです。
日本小児耳鼻咽喉科学会で中耳炎をワクチンで予防できるかという話もありました。学会で聞いた話に少し加えて書いてみます。

中耳炎の原因となる代表的な菌に肺炎球菌、インフルエンザ菌、モラクセラ・カタラーリス菌があります。
このうちモラクセラ・カタラーリス菌に対するワクチンは存在しません。
インフルエンザ菌に対するワクチンでヒブワクチンがありますが、これはインフルエンザ菌b型に対するワクチン。中耳炎を引き起こすのはb型とはタイプの異なるインフルエンザ菌であり、ヒブワクチンは中耳炎に有効ではありません。
肺炎球菌に対するワクチンはやや有効といえるようです。7価肺炎球菌結合型ワクチン(プレベナー)は、肺炎球菌性中耳炎の発症率を34%減少させたという海外のデータがあります。(しかし肺炎球菌には90種類のタイプがあり、ワクチンに含まれている以外のタイプの肺炎球菌性中耳炎はやや増加したそうです。)
まだ日本では未承認ですがSynflorix(10価肺炎球菌結合型ワクチン)というワクチンは、肺炎球菌およびインフルエンザ菌による中耳炎にも効果があるようです。

また、インフルエンザウイルスワクチンはインフルエンザ感染を減らし、その結果としてインフルエンザウイルスによる中耳炎およびインフルエンザに続発する細菌性中耳炎の発症を減らす事が知られています。(不活化インフルエンザワクチンの小児における検討で、インフルエンザ流行期のワクチン接種によって急性中耳炎全体の発症率を36%減少させるという報告があります。)


反復性中耳炎④

反復性中耳炎①   の続きです。
反復する中耳炎の原因の一つに胃食道逆流症があります。胃食道逆流症とは、食後(授乳後)に胃の内容物があがってきてしまう状態をいい、この胃液を含んだ吐物が耳管に入ることで中耳炎を起こします。
胃食道逆流症が原因の中耳炎では、その証明としてペプシノーゲンⅠ(胃から分泌される消化酵素ペプシンの前駆体)が中耳貯留液に検出されるそうです。
よく吐いてしまう乳幼児で中耳炎を繰り返す場合、これが原因かもしれません。


反復性中耳炎③

真夏並みの暑さも影響して、今日の外来はガラガラです。
反復性中耳炎①  の続きを書いてみます。
日本小児耳鼻咽喉科学会のシンポジウム「反復性中耳炎の危険因子とその対応」では授乳姿勢と反復性中耳炎との関連についての話もありました。
横になった姿勢での授乳は、中耳炎反復のリスクを高める可能性があるという話です。中耳(鼓膜の向こう側)は耳管という管で上咽頭(鼻の奥でのどの上の方)とつながっています。横になった姿勢で授乳すると、母乳が耳管を通して中耳に入ってしまうことがあり、これが中耳炎を引き起こす原因となります。また添い寝したままでの授乳は母乳が入り込むだけでなく、授乳後のゲップなしで寝ることになり、胃内容物の逆流を誘発し、それが中耳に入り中耳炎を引き起こす原因になります。


反復性中耳炎②

反復性中耳炎①の続きです。
反復性中耳炎のリスクの一つに受動喫煙があげられます。主に家庭内でタバコの煙を無意識に吸い込んでしまうケースです。
両親からの受動喫煙で反復性中耳炎リスクは1.74倍になるという報告があるとの事。母親が喫煙する場合、父親が喫煙する場合以上に強く影響があり、母親の妊娠中喫煙も中耳炎発症リスクを増加させるとの事でした。
受動喫煙を心配してベランダでタバコを吸うお父さんも多いと思いますが、吸い終わってすぐに室内に入ってはダメみたいですよ。喫煙研究の専門家によると、1~2分呼気にタバコの煙の成分が出ているんだそうです。


反復性中耳炎①

今日6月22日は夏至、1年で1番昼が長く、太陽の南中高度が最も高くなる日。634mある東京スカイツリーの影が、今日は100mくらいしかなかったらしいです。
横浜では今年はじめての真夏日になりました。これからの夏の暑い日には、耳鼻科の病気は減って、患者さんが少なくなります。
患者さんのいない時間を使って、日本小児耳鼻咽喉科学会で勉強してきた反復性中耳炎について書いてみます。(反復性中耳炎とは、目安として生後6ヶ月までに4回以上、あるいは1歳までに5回以上の急性中耳炎に罹患、または2歳までに5回以上の急性中耳炎に繰り返し罹患するものと定義されています。)
反復性中耳炎になりやすい因子の一つに「低年齢の保育園児」が1番にあげられます。特に2歳未満はハイリスクと考えられます。
中耳炎を引き起こす代表的な細菌として肺炎球菌とインフルエンザ菌があげられます。保育園児の75~90%は肺炎球菌を、80~95%はインフルエンザ菌を上咽頭(鼻の奥でのどの上の方)に保菌している(住みついている)との事。1歳までに上咽頭に肺炎球菌、インフルエンザ菌が住みついた場合、中耳炎を起こす確率は約4倍増加するとの事でした。
集団保育環境下ではウイルス性上気道炎(いわゆる風邪)にかかる回数が多くなり、これが誘引となって中耳炎をはじめとする細菌感染症を起こす回数も多くなってしまいます。
耳、鼻の事だけでいえば、低年齢からの保育園はあまりおすすめできないようです。