学校医との座談会①の続きです。
『東京都が公表するデータによると、スギ花粉症は都市部で急激に増えているようです。平成8年度のスギ花粉症推定有病率はあきる野市25.7%、大田区17.7%と、花粉の多いあきる野市で8%多い結果でした。ところが平成18年度にはあきる野市28.0%、大田区28.5%と、都市部の大田区で急激に増え、あきる野市を0.5%上回りました。この結果を見ると花粉症の発症には、花粉の飛散数だけでなく都市的な要素も関係しているようです。』
学校医との座談会①
今日は学校医を務める小学校で、PTA主催の『学校医との座談会』がありました。人前で話すのは得意ではありませんが、これも学校医の大事な仕事の一つです、頑張ってきました。
『アレルギー性鼻炎の現状と学校生活における注意点』という内容の話をしたのですが、その中でスギ花粉症はこんなに増えてますよ!という話をしました。その一部を書いてみます。
『東京都が公表するデータによると、東京都のスギ花粉症推定有病率はS58~62年度10.0%、H8年度19.4%、H18年度28.2%となっています。0~14歳の推定有病率はS58~62年度2.4%、H8年度8.7%、H18年度26.3%となっています。(20年前は子供に花粉症はあまりいないといわれていたのに、今では大人とあまり差がありません。)このようにスギ花粉症はすごく増えているんです!』
幸い私はスギ花粉症がありません。でもこのデータを見ると、花粉の多い日はマスクしようかなって考えてしまいます。
さねよし耳鼻咽喉科では花粉症の初期療法受け付けています。
花粉症の初期療法
『今年は花粉が非常に多い』 テレビや新聞でも、この話題をしきりにとりあげるようになってきました。今年は去年とは事情が違います。(2011年春の花粉飛散予測)
去年楽に過ごせたから大丈夫!とはいきません。油断しているとひどくなる可能性があります。
花粉症の初期療法をご存知でしょうか?症状が出る前から内服薬などを予防的に使っていく治療法です。症状を自覚してから治療された方と比較して、初期療法をした方は症状の発現が遅くなり、症状が軽くすみ、症状の治まるのが早くなると言われています。
その開始する目安ですが、花粉飛散の2~3週前頃からが良いと思います。スギ花粉は2月の上旬から中旬にかけて飛散を開始しますので、できれば1月下旬、遅くても2月の初めには内服の開始をお勧めします。
(初期療法をしている場合でも外出時のマスクは絶対に必要です。しつこいですが、今年は去年とは違います!)
どこの耳鼻科も2月に近づくと混雑します。できるだけ早めの受診をお勧めします。
スギ花粉の飛散開始日について
ご存知かと思いますが、今年は花粉が多いと予測されています。(2011年春の花粉飛散予測)
昨年春の花粉が少なかった事に加え、夏の日照時間が長かった点など花粉が多くできる条件が整ってしまいました。
花粉の飛散開始日は、1月1日からの最高気温を積算して400~450度になった頃といわれています。平均するとバレンタインデーの頃になります。(暖かい日が続くと予想外に早くなる事も考えられます。)
毎年花粉症の症状がひどい方には、花粉が飛び始める前からの治療をお勧めしています。花粉の飛散2~3週前から予防的に内服治療を開始すると、症状が出てから内服を始めるよりも症状は軽くすむようです。できれば1月下旬から、遅くても2月の初めには内服を開始する事をお勧めします。(早く内服を始めた方でも、外出時のマスクは絶対に必要です!)
どこの耳鼻科も2月に近づくと混雑します。できるだけ早めの受診をお勧めします。
世界の年平均気温
気象庁は、2010年の世界の年平均気温が平年(1971~2000年の30年平均値)差で+0.36℃、1891年以降では1998年に次いで第2位の高い値となる見込みと発表しました。陸域のみの年平均気温は平年差で+0.68℃、1891年以降では第1位の高い値となる見込みとしています。
あらためて地球の温暖化を実証するデータ、今後この地球はどうなってしまうのでしょうか?
そして耳鼻科医の立場として気になるのは、地球の温暖化が進むとスギ・ヒノキ花粉は今後どこまで多くなるのでしょうか?(東京都の公表するデータでは、スギ・ヒノキ科花粉飛散数はこの20年間で3倍になっています。)
2011年春の花粉飛散予測では今春の数倍の花粉が飛ぶとの事です。花粉症には早めの対策が必要です。過去に花粉でひどい症状の出たことのある方は、花粉が飛ぶ2~3週間前からの内服をお勧めします。具体的には、1月の下旬には内服を始めると良いのではないかと思います。
花粉症症状のでた時には、まわりの多くの人も症状がでており、耳鼻科は混雑しています。花粉が飛び始める前の、早めの受診をお勧めします。
舌下免疫療法
木曜日の休診日を利用してアレルギー学会に出席してきました。
興味のある演題のひとつに『花粉症に対する舌下免疫療法について』がありました。
アレルギー性鼻炎(花粉症)の治療の一つに減感作療法というものがあります。アレルギーの原因物質(スギ花粉症ではスギ花粉から抽出されたエキス)を皮下注射していく治療法で、アレルギー症状の改善が期待でき、実際に薬物の使用を減らすことが出来ます。この減感作療法、理論的にはアレルギーの治療として理想的な治療法なのですが、痛みのある注射を数年以上続けていく必要があることや、まれにショックを起こすことがあり、日本の医療機関では一般的になっていません。(当院でも、万が一患者さんがショック状態になってしまったらとの考えから行っておりません。)
『花粉症に対する舌下免疫療法』は舌下にスギ花粉エキスを投与していく方法で、減感作療法より安全で、そしてより有効な治療法とも考えられ、将来的には自分自身が自宅で行っていくことのできる治療法と考えられています。現在日本医科大学などからなる厚生労働省の研究班で臨床試験が行われています。(ヨーロッパでは既に有効性、安全性が確立されており、花粉症だけでなくダニアレルギーの治療にも使用できるようです。)花粉症患者さんには非常に待ち遠しい治療法だと思いますが、大半の耳鼻咽喉科医も待ち望んでいます。臨床試験ではやく安全性、有効性が確認され、保険診療の適用される治療法となってくれることを望んでいます。
2011年春の花粉飛散予測
日本気象協会が来春のスギ・ヒノキ花粉の飛散予測を発表しました。関東地方では、この夏の猛暑の影響で例年(過去10年の平均)より多いかやや多いとのことです。(例年の150%以上200%未満を多いとしています。)今春は例年の2~3割でしたので、今春と比較すると数倍の予測になっています。
花粉の飛散数は前年夏の日照時間が長くなると多くなり、さらに前年の飛散数が少なければ多くなる傾向があるといわれています。来春はその多くなる条件を十分すぎる程満たしています。ちなみに過去最大に飛散した2005年との比較で、日本気象協会は50~90%程度と予測していますが、weathernewsでは同程度かそれを上回る可能性があると予測しています。この違い、日本気象協会の見解は2010年夏は2004年夏に比べ日射量が少なかったこと、気温が高すぎて花芽の形成が抑えられることをあげています。